皆さんこんにちは。
駿河屋の 一桝です。
木には本物とニセモノがあるのをご存知ですか。
本物の木とは、昔ながらの伐採、乾燥方法を行った、木の色艶よく香りも良い木のことです。
アロマ成分も豊富に残されていて、完成した住まいは本当に良い香りに包まれます。
具体的には昔ながらの木の伐採方法と乾燥方法である
「新月伐採」と「葉がらし」と「天然乾燥」の木材のことです。
今日はこの3つについてお話しします。
≪「新月伐採」とは≫
新月伐採とは、月の満ち欠けに合わせて木の伐採時期を決める昔ながらの伐採方法です。
この伐採方法は、オーストリアのチロル地方の営林署で働くエルビン・トーマという方が、出版した
「木とつきあう知恵」という本で紹介されたものです。
めちゃめちゃ簡単に説明すると
「おじいちゃんの言うとおり、月の満ち欠けに合わせて木を伐採したら、良質な木になったよ」
という内容が書かれています。
出版当初は建設業界でもかなり話題になったのですが、「新月」という言葉が走りすぎて
新月と同時に伐採をしたのですが、木が特段良質になることはなく、「あの本は嘘だ」と言われることになってしまいました。
しかし、月の満ち欠けに合わせて伐採時期を変える研究をした林業家さんがいて、
満月から新月の間に伐採をしたところ、明らかに虫に食われづらく、カビが生えづらい、割れにくい木材となったんです。
あのバイオリンの名器、ストラディバリウスも新月の木と言われています。
ヨーロッパの古い知恵が、現代の日本によみがえったんですね~。
でもこれには後日談があります。
林業家さんが「最後の宮大工」と言われた西岡常一氏に直接たずねたそうです。
「西洋では月の満ち欠けに合わせて木を伐採すると、木が良質になるらしいですが、ご存知ですか」
と
その時の西岡さんの返答は
「そんなの当たり前すぎて誰も言わねぇヨ」
だったそうです。
実は日本でもそのような伐採方法をされていて
さらには最古の建築の書である「愚子見記」(ぐしけんき)にも記されていたんですね。
≪「葉がらし」とは≫
木は伐採したら山で放置して乾燥させます。
これを「葉がらし」と言うのですが、実際にはすぐに山から下ろしてしまい、製材して出荷されてしまうものが多いです。
伐採後に数ヶ月、しっかりと「葉がらし」をすることで、木が良質になります。
具体的な「葉がらし」のメリットとしては
・軽くなり運搬経費、CO2削減に貢献
・色、艶、香りが良くなる
・乾燥中にデンプン質を消費してカビ、腐りに強くなる
・反り、狂いが少なくなる
などです。
僕も全国の山で伐採に携わる方々と話しをしましたが、共通して皆さん口にするのは
「葉がらしはやったほうが良い」
ということです。
でも実際に「葉がらし」をしっかり行っているところは少ないです。
理由は、伐採した木材は急いで製材して現金化しないと資金がまわらないからです。
林業は不採算産業と言われるほど、補助金に頼った経営です。
その為資金に余裕のない会社が多いのです。
伐採したらすぐに製材して出荷する。
これを昔は「ズブ生」と言ったりしました。
≪「天然乾燥」とは≫
木材は乾燥させることで、反ったり、割れたりしない材料になります。
しかし、乾燥させるには時間がかかるため機械で乾燥させるのが現代の木材の主流です。
日本には関東大震災の時にロシアから輸入された乾燥釜が始まりだったと言われています。
木材を伐採して震災復興の為に木を急いで出荷できるようにしたんですね。
当時の乾燥釜は高温で乾燥させるものでしたが、柱の内部が割れたり、木の香りが無くなったり、とても良質とは思えない木材でした。
現代は低温乾燥になったとはいえ、香りや色艶は、自然のままに時間をかけて乾燥させる「天然乾燥」材には叶いません。
ちなみに当社の看板は大正時代のケヤキを使っています。
新聞紙に包まれて保管していたものですが、当時の新聞だったのを覚えています。
このように、木材の伐採や乾燥だけでも、昔と今では全く違います。
しかし、昔ながらの方法にはそれなりに理由があるんです。
経済合理主義でうごく現代社会では、そうした材料は忘れ去られてきましたが、現代でもほんの一部で細々と続けられています。
僕のところに相談に来たかたには、新月伐採、葉がらし、天然乾燥の木と、そうでない木を比較してご覧頂くのですが、色艶が全く違うことに皆驚いています。
日本は戦後の復興と経済発展の為に効率優先で時代を駆け抜けてきましたが、それと引き換えに大切な事を沢山失ってきたように思います。
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