私たちは日々、新築、リノベーション工事の設計・施工を行っていますが
ちょっとした部分で、リノベーション費用がアップしてしまうマンションがあります。
事前に知っていれば防げたこともありますし
知っていることで、予算配分で覚悟しておくことも出来ます。
なにより心配なのは、コストアップに繋がる要因を知らずに
マンションを購入してしまって、
思い描いたリノベーションに多額の費用が加算してしまい
こんなはずではなかったとガッカリしてしまうのが残念でなりません。
今日は新築マンションを何棟も手がけ、現在では
マンションリノベーションも多く施工している私の視点から
最低限知っておいてほしいポイントをお伝えします。
1.エアコンを各部屋に設置可能かチェック
1.エアコンを各部屋に設置可能かチェック
一般的な現代住宅はエアコン設置が必須ですが
物件の状況によって、エアコン取り付けが出来ない事があります。
それは、室内側に原因があるのではなく
外部、それも廊下側に原因がある場合です。
Aというマンションは角部屋で日当たりが良かったのですが
マンションの住戸並びの一番端であり、
共用廊下も玄関前までしか伸びていませんでした。
その為、共用廊下側の洋室二つのうち、一部屋に
室外機を設置する場所がありませんでした。
また、
Bという物件は、共用廊下側洋室の窓下に
室外機を置くスペースがありませんでした。
両者ともに室外機が置けないので
室外機1台をバルコニーに設置して、
2台の室内エアコンを稼働させる
「マルチエアコン」を選択しなければならず、
通常のエアコンよりも割高となってしまいました。
その他の解決方法では、
廊下側の部屋の室内エアコンの室外機を
無理矢理バルコニー側に設置する方法もありますが、
あまりお勧めはできません。
その理由は、室外機と室内機を結ぶ
冷媒管という管が長くなるので
冷房効率が非常に悪くなります。
また、エアコン稼働の際に出る水の処理を
室内の排水管に接続しなければなりません。
こうした配管の延長や接続は
後々のトラブルに発展するだけで
まったくメリットがありません。
出来るだけ、エアコンはその部屋に面した部分に
設置できるような間取りを選ばないと
余計な配管工事や、将来の修理費がかかってしまうことに繋がります。
2.縦の排水管の位置PS(パイプスペース)
2.縦の排水管の位置PS(パイプスペース)
マンションの排水管は、上の階と下の階を結んでいます。
そうした配管の縦系統を壁で囲んだものを
PS(パイプスペース)と言います。
図面表記は「PS」ですので、
キッチンやトイレなどの水回りに「PS」とある部分を確認してください。
このPSですが、当然ながら上下階と繋がっている為に
動かすことが出来ません。
通常はトイレの汚水用の配管と、キッチンや洗面、浴室の
雑排水用の二つがあります。
しかし、
プランのバリエーションの多さが売りの物件ですと
このPSが住戸内に3つも4つも
場合によっては5つも
点在してしまったりしている場合があります。
こうしたケースはリノベーションの間取り変更でも
非常に制約が出てきてしまい
自由なプランをつくることが難しくなります。
また、
メンテナンスで必要になる配管の洗浄や交換を考えると
工事中のわずらわしさや、漏水の危険性から
住戸内には少ないにこしたことはありません。
3.天井の構造をチェック
3.天井の構造をチェック
デベロッパーのコストダウンの手法として有名なのは
床も天井もコンクリートに仕上げを直接行うことで
1フロアあたりの高さを低くかせぎ
建物全体で1フロア分、多く分譲するという手法です。
このため、コンクリートに直接クロスを貼り
コンクリートに直接フローリングを貼った物件というのがあります。
こうした物件を
「直天」(じかてん)
「直床」(じかゆか)
などと言います。
天井を叩いてみて、コツコツと硬い音がすれば「直天」です。
こうした天井は、リノベーションで間仕切りを変更する際に
配線が天井のコンクリートに埋められているので
配線を移動するのが非常に困難です。
また、照明器具を付ける「シーリング」と呼ばれる器具も
コンクリートに埋め込まれているので
少しの間仕切りでリビングの配置が変わっただけでも
移動することが出来ません。
では、そういう場合どうするかというと
配線を天井に露出させて、
プラスチックのカバーをつけるという
なんとも残念な見た目になってしまいます。
当然、オシャレなダウンライトも入れられません。
ではこうした場合にどうするかというと
新たに天井を二重に作るしかありません。
当然ながら天井高は低くなり、コストもかかり
室内空間も狭くなってしまいます。
4.床の構造をチェック
4.床の構造をチェック
天井と同じように、床の仕上げがコンクリートに
直接仕上げ材が貼っているケースもあるとお話ししました。
合板のフローリングだったり、カーペットだったりします。
こうした「直床」のマンションは古い場合が多く
昭和の物件だったりすると、コンクリート自体が
たわんできて下がっている場合もあります。
また、カーペットの構造はフエルトと呼ばれる下地と
カーペット本体とを二重にして施工していますので
結構、新築当時のコンクリート床の平滑性については
かなりいい加減な物件が多いです。
つまり、既存のカーペットを剥がして
直に貼れる直貼用フローリングを貼るにしても
コンクリートの平滑性が悪すぎて貼れないのです。
その場合はモルタルで補修したり
レベラーと呼ばれる水と同じ流動性のモルタルで
水平にしたりと、余計なコストがかかります。
また、直床に無垢のフローリングを貼りたい
という場合には、遮音マットなど色々とありますが
基本的に遮音性能はあまりよくありません。
なので、「二重床」工法を用いて
床を上げて遮音性能を確保する必要があります。
当然その費用は、「二重床」工法で施工してあるマンションより
余計にかかるコストですし、
天井も低くなることに繋がります。
5.床の段差に注目
5.床の段差に注目
マンションの構造体である床は、通常は真っ平らです。
しかし、水回りと呼ばれる、洗面、キッチン、トイレなどの部分のみ
一段下げてある構造のものがあります。
これを「段差スラブ」と言います。
なぜこうしたことをするかというと
水回りには必ず床下に配管が必要になってきますが
その配管を通過させるスペースを確保するために
コンクリートの床がわざわざ段差になっています。
こうすることによって、配管が不要なリビングや洋室の高さと
水回りの高さを統一することが出来るのです。
水回りを極端に移動することを考えていないのであれば
段差スラブは将来のリノベーション(フルリフォーム)にも非常に効率的ですし
余計な段差が生じません。
ラーメン構造か壁構造か確認
ラーメン構造か壁構造か確認
マンションは主に二つの構造に分けられます。
・ラーメン構造
ラーメン構造とは柱と梁で構造を構成していて
比較的自由に間取り変更が出来ます。
・壁式構造
壁式構造は低層のマンションや
公団住宅などに多い構造で
柱と梁は壁の中にあるという概念で
構造計算された構造で
柱や梁のでっぱりが室内に無い代わりに
主要な間仕切り壁がコンクリートで出来ていて
間仕切り変更などを伴うリノベーション(フルリフォーム)に
かなり制限されてしまいます。
壁構造かラーメン構造かは
とても重要なポイントですので
必ずチェックをしなければなりません。
2015/10/25追記
まとめ
まとめ
最近、マンションを購入して、リノベーションをしたいというお客様の
購入された物件は、何故か「直床」(じかゆか)と言われる
「コンクリートに直接、合板フローリングを貼ってある」マンションが
とても多いです。
「直床」は「二重床」よりも施工費用が余計にかかります。
それをご存じの上で購入されていれば良いのですが
全く知らずに購入している場合には
リノベーション(フルリフォーム)予算の一部を、そちらに割かなければなりません。
物件の年代的に、直床の多い物件が
市場に出てきている時期なのでしょうか。
いずれにしても、
ご理解していないまま購入し、無垢の床をご希望する場合には
下地の費用が余計にかかるとお伝えするのが
非常に心苦しく感じております。
ですので、
なるべく早くこの話しをまとめて
ブログとメルマガで配信したいと感じておりましたが
今日やっとまとめることが出来ました。
当然ながらマンション購入の決め手は
今日お話しした内容全てではありません。
立地や災害履歴などもとても重要です。
しかし、
せっかくの楽しいリノベーションが
事前の知識が不足していたために、
お金のことばかり気にしなければならなくなるのが、
こちらとしても申し訳なく感じてしまいます。
どうかこのブログが、マンションリノベを楽しみにしている
沢山の皆さんに届きますように。
過去に関連記事を書いてます。
「マンションは管理を買え」は本当 購入前チェックポイント
中古マンションを買ってリノベするなら確認すべき5つのポイント
マンションの寿命は二つの「管理」で変化する
知って損はないマンションの「買ってはいけない」
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<編集後記>
毎日朝6時に更新される僕のブログですが
ワードプレスの自動更新機能を使ってUPしております。
毎日ブログを更新するのは結構大変です。
忙しい日もありますし、会社にいない日もあります。
休日もありますし、来客の多い日もあります。
なので常時7日分くらいはブログに余裕をもって
書いております。
時間も1時間で書く物もあれば、2時間以上かかるものもあります。
とても大変な作業ではありますが
自分の知識を整理できるというメリットが大きいです。
また、これは想定外だったのですが
しっかり読み込んでから、当社にいらしてくれるお客様は
とても知識がつくので物件探しも工事の打合せも
スムーズに進むというお互いのメリットもありました。
ブログいつも読んでます!と言われることも
とっても励みになります!
【お問い合わせ】 【著者 プロフィール】
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