皆さんこんにちは。
一級建築士、一級建築施工管理技士、宅地建物取引士、厳選素材アドバイザー、駿河屋の九代目 一桝です。
子育てと子供部屋においてとても重要なのは、
「人間は成長する過程で『テリトリーを形成する力』をつけていく事がとても大事」
だというお話しを、以前のブログでも書きました。
ブログ【子供部屋よりも居場所(テリトリー)や間取りが子育てで大事なわけ】
これは外山知徳先生の著書「住まいの家族学」で書かれていることです。
今日は過去の痛ましい事件などを例に「子供部屋を与えれば良いというものではない」というお話しをします。
ちょっとショッキングな事件をさかのぼります。
2004年に起こった事件は少年が自宅で両親を鉄アレイで殴って殺害したものでした。
殺害理由は「両親と祖父から『習い事をしろ』と責められていたので皆殺しにしてやろうと思った」と供述しています。
同じ日に他の青年は両親と姉を金づちと包丁で殺害。
父と姉から「仕事をしろ」ととがめられていて、青年は「父がいると自分の居場所がない。死刑になっても父を殺すしかない」と供述したといいます。
共通するのは、まじめな公務員などの親をもち、ひきこもりがちな生活の中で、親をうとましいと感じる思いや恨みが不満に変わっていったことで犯行に繋がったということです。
青少年や家族の問題に詳しい評論家の芹沢俊介氏は
「二人は自分の居場所を奪おうとした家族を排除しようとした」
と分析しています。
別の事件では、暴力までふるって勉強を強いる父親に反発して、自宅に放火し母親と弟を殺害するという事件がありました。
これは父親が「ICU」(集中治療室)と名付けた子供部屋に夜中までつききりで勉強を強いていたという背景があったのです。
そんな子供部屋は心が安まる「自分のテリトリー」にはなりません。
居場所を奪われた人間がどのようになるか。居場所のない子供がどのようになってしまうのか、このような痛ましい事件に発展しなかったとしても、現代社会には自分の居場所がなくなってしまった人たちが増えているのかもしれません。
居場所とは本来動物である人間も、本能的に求めている「テリトリー」のことです。
何度も言いますが、これは「個室」である必用は全くなく、空間の一部でも、自分の場所として認識すれば心も安心できる場所となるのです。
子育てにおいては、その「場所」を自己管理訓練の場として、掃除や片付けをさせることは、子供の健全な育成や心の成長にとても大事な役割となります。
このように重要な「居場所」(テリトリー)ですが、物理的に必用な役割がある一方、先の事件のように「心の居場所」というものが子供だけではなく、大人にも必要なことは皆さんも理解頂けるのではないでしょうか。
大人は可愛い子供を立派に育てようと、ついつい過保護過干渉になりがちです。
私自身も自らの子育てを振り返ってみて、過干渉で息子との関係に失敗したことがありました。早めに気づき自分自身を改めることでなんとか間に合いましたが、こじらすと一生のわだかまりになってしまったり、子供のトラウマとなり、一生ひきずってしまう精神の歪みへと繋がることにもなりかねません。
自分の子供だから心配だという気持ちは十分わかりますが、自分の子供だからこそ、親である自分が一番信頼してあげることが大事なのだと、僕自身も今でこそわかるようになりました
。
信頼とは心で信頼しているのは当然ながら、具体的行動で示すことも大事だと思います。
それにはまず「一人の人間として尊重すること」だと思います。
「自分がこうだったから息子にも」というのは、僕が失敗した一番の原因でもあります。
子供は自分とは全く別の人格であり、自分の血は半分しかはいっていません。冷静に自分の子供を観察すると、自分とは全く違う面も兼ね備えていることに気づきます。
自分とは違う長所を見つけ、認め、伸ばすことが親の務めなのではないでしょうか。
子供と子供部屋の問題は、どの家庭にも必ずあります。
しかし、安易に子供部屋を与えれば済むという問題でもありません。ましてや、子供が子供部屋を欲しいと言っていないのに、部屋をもうけて押し込むようなことは絶対にしてはいけません。
反対に家が狭く、子供部屋を与えられないから子供が健全に成長できないということは全くありません。
人間は動物と同じで「テリトリー」、すなわち「居場所」があれば良く、子育てにおいては「居場所」を管理(整理整頓清掃など)させることで、十分に子育ておける躾や習慣を身につけ、成長させることが出来ます。
大事なことは、物質的に「居場所」をつくり「与える」ことではなく、心の居場所もつくること。
冒頭の事例は「子供部屋」があっても「心の居場所」がないがために悲しい事件が引き起こされています。
子育てには「場」と「心」の「居場所」を意識して環境をつくってあげることが、親としての大事なつとめなんですね。
子供部屋をただ与えれば良いということではありません。
参考図書「家族の絆をつくる家」
外山知徳 著(平凡社)
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<編集後記>
住まい作りを日々させて頂く中で、やはり「子供部屋」は大きなキーワードになってきますね。
でも、子供ば2人、3人となると、なかなか広い家を確保するのは難しいですよね。
そこで提案するのは「トコロテン型子供部屋」です。
3人兄弟で長男が年頃なら、長男だけ個室、次男や三男は相部屋にします。弟たちが育ってくると必然的に個室が必用になったりするので、長男は自立を促されます。
こうした形で、子供の自立を促しながら、受験などの時期にさしかかった子供には落ち着いた場所を与えるということを提案しています。
でも、最近は個室を全くつくらないというご家族もいますが、落ち着いた勉強スペースは設けたりします。
大事なのは個室よりも「居場所」です。
そしてなにより、リビング・ダイニングを愛情をたっぷり注ぎ込めるみんなの場所。つねに温かく見守ることの出来る場所にすることがとても大事なんですね。
さて、これで今年のブログは終了です。
一年間ありがとうございました!
今年の年末年始は、例年のように雪山ばかり行かず、家族でゆっくりした時間を満喫しようと思います。
そういえば新年早々、僕の友人が所属する秋田のプロバスケチームの試合に息子と観戦に行ってきます!
なんと新年初の試合を「球はじめ」と言うらしい(笑)
来年も宜しくお願い致します!
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