皆さんこんにちは。
駿河屋の九代目 一桝です。
皆さんの子供の頃の家はどんな感じでしたか?
郊外の分譲地?公団住宅?地方の一軒家?
どんな住まいでも皆さんの記憶には
様々な出来事とともに
鮮明に残っているのではないでしょうか。
今日は「子供をたくましく育てる」家について
おはなしします。
この写真は戦前の写真なので
僕が育った時代とは違いますが
林場(りんば:材木の倉庫)の雰囲気は
このままでした。
僕が子供のころ育った家は、
この倉庫の右側に木造2階建てがあり、
家の敷地は大工さんの
加工場になっていました。
朝から大工さんが店に出入りをし、
父や叔父は忙しくトラックで配達したり、
仕入れた木材を倉庫へ運んだり。
映画「三丁目の夕日」そのままです。
加工場からは大工さんが木材を
ノミやカンナで削る音や、
威勢のいい会話が聞こえていました。
家はとても古く、2階に寝転ぶと
傾いていたのがわかるほどです。
そこに祖父母と、叔父、
そして僕の両親と姉が二人の
9人家族で住んでいました。
天井は杉板張りで、
節が目玉みたいに見えて、
子供の頃に熱を出してずっと寝ていると、
ちょっと怖かったのを思い出します。
階段や台所の床は松などが張ってあり、
黒くてピカピカになっていました。
布団は縁側で干していて、
よくそこで昼寝をしました。
「太陽の香り」というのか、
柔軟剤とは違う、あったかい香りでした。
親父にしかられると、
倉庫に縛られたり、
押入に入れられました。
怖かった記憶はありませんが、
今でも懐かしく思い出します。
今の子供たちは床を雑巾がけする
機会はあるのでしょうか。
当然ながらお風呂を
薪で焚くこともありません。
熱を出して寝込んでいる時に、
天井の木目を眺めて節を数えて
眠ることもないでしょう。
たしかに、家そのものは
メンテナンスが楽になりました。
でも
メンテナンスもお金を出して
お願いすることが、
より増えたように感じます。
小学校低学年の頃、
年末の僕の大事な仕事は、
障子の張り替えでした。
年の瀬ムードに家族や親戚が
こたつに入っているときに、
その横でみんなの視線を受けて
障子の張り替えをしていました。
うまく張れるとみんなに褒められて、
得意になって家中の障子を
張り替えたものです。
(今思えば、大人たちに良いように使われていたのかも・・・)
コンセントが壊れたりすると、
小学生の僕がブレーカーを下げて、
配線の修理をしたりしました。
現代の住まいはメンテナンス自体が
楽になっているのと、
お金を出してなんでもやってもらう
時代になったような気がします。
そうしたことによって、
「手入れして大切に使う」
という文化が無くなってきたのだと思います。
物を大切に長く使うという意識は、
実は家庭で培われてきたものですし、
家の手入れなどでも
多く学んだように感じます。
画像は駿河屋の自然派体験クラブ
「つちからの会」の「田んぼ学校」での一コマです。
子供を自然の中に連れ出して遊ぶと、
様々なことを学びます。
先日は
「子供にこそさせるべき「焚き火」の効果」
というブログを書きましたが、
こうした学びはなぜ大切かというと、
机上の勉強ではなく、
体験教育だからです。
五感すべてを使って学んだことは、
体験として生きてきますし、
子供をより強くたくましくさせます。
住まいは長く生活をする空間であり、
体験教育の場なのだと考えると、
何でもお金で解決するよりも、
少し面倒でも
親子が一緒になって手入れをしたり、
修理をしたりという体験が、
今の時代とっても大事なことのように感じます。
壊れたらすぐに買い換えたり
汚れたらすぐに貼り変えたり、
傷ついたらすぐに交換したりというのは、
なにかゲームでキャラクターが死んでも、
すぐにリセットして
ゲームが再開できるようなものと、
とてもダブって見えるのは僕だけでしょうか。
壊れたり傷ついたりしたものを、
修理して長く使う体験を多くすることで、
道具の使い方を覚えたり、
道具の手入れを覚えたりしていきます。
そうする事で、
物に愛着が芽生えたり、
大切に長く使う事の大切さを学んだり。
住まいはそうした
「学習の場」でもあるはずです。
そうした体験を通じて、
生き方やアイデンティティーを
育んでいくのだと思います。
なので、
住まいはそうした体験が
より出来るように考えて作ることも、
とても大切なことなのです。
現代社会は便利になりすぎたために、
大切なこともずいぶん無くしたように感じます。
家の中での生活習慣も便利になった反面、
子供たちに「体験させる」事も減りました。
そうしたことが
社会の様々な問題を引き起こしていることと、
無関係とは思えないのです。
どんなものでも、
手入れをして大切に使う。
こうしたことすら
教えらる機会が減った現代では、
意図的にそうしたことを
住まいに組み込む必要もあると思います。
安易に交換できるものではなく、
長く大切に使うことで味が出て
キズすらも思い出の一部になるような温かな住まい。
大人たちのそうした姿勢は、
子供たちの心にもちゃんと残ることだと思いますし、
「たくましく育つ」とはそういうことだと思います。
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<編集後記>
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